名古屋市在住昆虫と野球——少年の心をときめかせる二つの世界は、いつのまにか“アート”というもうひとつの場所へつながっていった。彼の作品には、そのまっすぐな情熱と、驚くほど細やかな観察力が息づいている。じっと昆虫を見つめるときの集中力。野球のフォームや動きを目で追うときの洞察。そのすべてが、色彩のバランスや動物たちのリアルな描写としてキャンバスに現れる。ただ好きだから描くのではなく、好きだからこそ「見える世界」がある——それが彼の強さだ。優しい気持ち、丁寧に世界を見るまなざし。作品には、そんな少年の心がそのまま写し取られている。色と色が重なり、形が変わり、思いもよらない表情が生まれるたびに、彼の表現の幅は静かに、しかし確実に広がっていく。そして、一つひとつの作品に向き合う姿は、まるで小さな物語を紡ぐよう。集中し、粘り強く、何度でも挑戦していく。その時間こそが、彼のアートを育て、心を深く豊かにしている。彼の描く世界は、まぶしさとあたたかさをあわせ持つ。“好き”という気持ちの力が、ここまで真剣で、ここまで美しいのか——そのことを作品がそっと教えてくれる。